東京地方裁判所 昭和25年(ワ)2839号 判決
原告 村井電気株式会社
被告 株式会社東海物産社
一、主 文
被告は原告に対し金五十万円及び之に対する昭和二十四年十一月二日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は原告が金十万円の担保を供するときは仮に執行することができる。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文同旨の判決並に仮執行の宣言を求め、その請求の原因として被告会社東京営業所主任磯村金正は昭和二十四年九月七日原告に対し手形金額金五十万円、支払期日昭和二十四年十一月一日、支払地、振出地共に東京都千代田区、支払場所株式会社千代田銀行小川町通支店、振出人株式会社東海物産東京営業所磯村金正の約束手形一通を振出し交付し、原告は右手形の支払期日に呈示した処、その支払を拒絶されたので右手形金額及び之に対する昭和二十四年十一月二日以降完済に至るまで手形法所定の年六分の損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだと述べた。<立証省略>
被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め答弁として、被告主張の事実は全部認めるが本件手形の振出人は訴外磯村金正であつて被告会社ではないから被告会社に対する原告の本訴請求は失当であると述べた。<立証省略>
三、理 由
被告会社東京営業所主任磯村金正が原告に対し、その主張の如き約束手形を振出し交付し、原告が右手形の支払期日に之を支払場所に呈示したことは当事者間に争いがない。よつて本件手形の振出人が訴外磯村金正であるか被告会社であるかについて判断するに、被告会社の本店は名古屋市にあつて東京都千代田区神田駿河台二丁目四番地に東京営業所を設置していること及本件手形振出当時訴外磯村金正が被告会社東京営業所主任であつたことは当事者間に争がなく、そして成立に争のない乙第一、二号証の各一、二に証人社本文夫の証言及原告会社代表者本人訊問の結果を綜合すると、被告会社の東京営業所は本店に従属しているが一定の範囲で独立の権限あることが認められるのであるから右東京営業所は実質的に被告会社の支店と認むべく而して商法第四十二条によれば支店の営業主任たることを示す名称を附した使用人は之をその支店の支配人と同一の権限を有するものとみなされ営業主に代つてその営業に関する一切の裁判外の行為をなす権限を有するのであつて、従つて営業に関し手形行為をなす権限あるものと謂うべきである。そうすると訴外磯村金正は被告会社の支店の支配人と同一の権限を有しその営業のため手形行為をなす権限あるものと謂わねばならない。被告は右磯村に対し手形行為をなす権限を附与していないと争ふけれどもそのやうな制限は善意の第三者に対抗出来ないのであつて原告がこれにつき悪意であることの立証のない本件においては被告の右抗弁は採用出来ない。
そして手形に代理人として署名する者が本人との代理関係を表示するには必ず一定の文字を記載すべき特別の方式はなく、要するに代理人自身のためでなく本人のために手形行為をなすことを認めうる程度の記載があれば足りると解すべき処、甲第一号証の一の本件手形の振出人として東京都千代田区神田駿河台二ノ四株式会社東海物産社東京営業所磯村金正なる記載は、前示認定の権限を有する被告会社東京営業所主任たる磯村金正が被告会社を代理して本件手形を振出したものと解するを相当と謂うべきである。被告は磯村の肩書は同人の住所を記載したものである旨抗争するけれども証人社本文夫の証言によれば右磯村は本件手形振出当時東京都立川市に居住していたことが認められるのであるから右主張は理由なく、他に前記認定を覆えすに足る証拠はないから被告会社は本件手形につきその支払義務を免れることはできないものと言わざるを得ない。よつて本件手形金及び之に対する呈示後たる昭和二十四年十一月二日以降完済までの手形法所定年六分の損害金の支払を求める原告の本訴請求は正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 花淵精一)